CATEGORY: 日常
DATE: 03/02/2018 13:36:16
ここ数日で、一番天気が良い。
空気が澄んでいて遠くの景色もくっきり見える。
「もう、冬じゃないのかな」
空を見つめる。
「あ、飛行機だ」
「どこに行くんだろ」
飛行機雲を残して、遠くへ飛んでいった。
私もどこかに行きたいな……と、アリスはつぶやいた。
「……そういえば、この前のお寺」
「行ってみたいかも」
「ラッキー、この前のお寺覚えてる?」
「不気味だって言ってたじゃない」
「今日は天気がいいから、不気味じゃないかも」
「行ってみる?」
「行く!」
「さっそく準備しなきゃ」
「何を持っていこうかな?」
「重たいもの持って行かないでよ、疲れるわよ」
「あ!そうだ」
「お供えがいるよね……お菓子でいいかなぁ」
「んーと……これでいいかな」
2人は森の小道へ入っていく。
差し込んだ木漏れ日が草に当たり、鮮やかな色を見せている。
入り口近くはまだ道が整備されており、迷う心配はない。
「道、覚えてる?」
「なんとなく、ね」
迷わず進んでいく。
森が深くなるにつれて、空気も湿り気を帯びてくる。
わだちが出来ているものの、落ち葉と枯れ木で覆われている。
歩くたびにカサカサ、パキパキと音を立てる。
「楽しいね」
「まだ到着してないけど?」
「違うよ、こうやって落ち葉を踏むと音がするよ」
「冬で乾燥してるから、なおさらね」
アリスはわざと大きく音をたてて歩く。
「楽しそうね、ふふ」
ラッキーは静かに歩いて行く。
アリスが楽しげにはしゃいでいる様を見ながら。
さながら、アリスの保護者のようだ。
森は静寂に包まれている。
人の手が入っている様子はなく、草花が自由に生い茂っている。
遠くから、川がせせらいでいる音が聞こえる。
行ってみたいが、迷うことを恐れて道から外れるのは避けた。
「あ、アリス」
「到着したみたいね」
「お地蔵さんは……」
「あった、あった」
この前と変わらない様子で、地蔵はそこに佇んでいる。
ただ、お供えが変わっている点を除いて。
「こんなの置いてあったっけ」
「他にも来る人がいるってことね」
「へぇ、どんな人がくるんだろう」
そこには缶コーヒーが置いてあった。
お地蔵さんはコーヒー飲めるの?なんて会話をしながら、アリスは持ってきたお菓子をそっと置いた。
ありがとう、と感謝の声が聞こえた気がした。
「なんだか嬉しそうだね」
「こんな場所だもの、私達が来ただけで嬉しいと思うわ」
「無事に帰れますように……」
「……じゃあ、行ってみる?」
「ちょっぴり怖いけど」
アリスは入り口に立った。
深呼吸をする。
「すー……」
「…………はぁ」
壁には一面に苔が生えており、お世辞にも入りやすい雰囲気とは言えない。
森が深いため、日が差さず薄暗い。
入り口には寺の名前が彫ってある岩が置いてあるが、漢字が読めない。
「何て読むんだろう」
「……分からないわね」
「とりあえず、行きましょう」
「……うん」
境内には、誰もいなかった。
不気味なほど静かで、落ち着いている。
「大丈夫?アリス」
「ちょっと怖いかも」
「怖いって……神聖な場所だから」
「怖いものなんてないはずよ、ここには」
「うん……」
ふと、何かが聞こえることに気がついた。
「ラッキー……何か聞こえない?」
「人の声かしら」
人の声らしき何かが聞こえる。
耳を済ましてみるものの、何と言っているのか分からない。
アリスは寒気がしたような気がして、急に怖くなった。
「……帰る」
「ちょっと待ってよ……来ただけで帰るの?」
「多分、お経を唱えてるんだと思うわ」
「……帰ろうよ」
アリスの泣きそうな顔を見て、ラッキーは頷いた。
次はこちら。

コメント