CATEGORY: 日常
DATE: 03/12/2018 02:08:09
「もうすぐ春だね」
「何度目の春かしら」
温かい日差しの中、2人が呟いた。
木々からは若葉が芽生えてくる頃だろうか。
心なしか、花壇の草花もいきいきとして見えた。
「本当に学校に行くの?」
「楽しみなのか行きたくないのかどっちなのよ……」
「両方だよ」
「友達ができるかな……とか」
「勉強大丈夫かな……とか」
「他に、もいっぱい」
「そんなにドキドキしないでよ、寿命が縮まるわよ」
「……他の話にしてよ」
浮かない顔のアリスが話をそらす。
「春は」
「ん?」
「春は……出会いと別れの季節っていうよね」
「逆じゃないかしら」
「もう!!」
会話が続かない。
「あ、アリス」
「花が咲いてるよ」
「……それで?」
「花占いでもしたら?」
雑草に混じって、1つだけ低い背丈の橙色の花が咲いている。
早咲きの花だ。
アリスはその花を摘んでラッキーのもとに戻ってきた。
「じゃあ……学校が楽しいか、楽しくないか」
「占いましょう」
「楽しい」
「楽しく……ない」
ぷちぷちと花びらをちぎって散らす。
1枚1枚が、ひらひらと回転しながら着地する。
花びらが残り少なくなってきた。
「こんなことするの久しぶりね」
「……」
「楽しい」
茎だけが残り、裸になった名もなき花を握りしめる。
「やった」
「よかったじゃない」
「……」
足元を見る。
ちぎった花びらが散らかり、まだら模様を描いている。
「ごめんね……お花さん」
「ちぎられて痛かったのかな」
「それは……花にしか分からないわ」
「そうだよね」
アリスが振り返ると、遠くで同じ花が群れをなしているのが見えた。
橙色のじゅうたんのようだ。
「あっち見て」
「いっぱい咲いてる……」
「あら、本当ね」
「花が、大丈夫だよって言ってるわ」
「わかるの?」
「そうね」
もちろん、アリスをなだめるための冗談であるが本人は信じている。
「見に行こうよ」
「いいわよ」
ちぎられた花びらは、風に乗って何処かへ飛んでいった。
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